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目がいいということ<みつまめ>

私は子どものときから目がいい。

オトナになった今も両目とも1.5なのだ。

目がいいことと関係があるのかわからないけれど、私は普通の人が見つけられないようなものを瞬時に見つけてしまう。

車窓の向こうに見える看板、空を横切る誰かが手を放してしまった風船、高速道路の標識、森の中に隠れている屋久猿、そして、人ゴミの中の昔の知り合い。

昨日、家への帰り道、私は巣から落ちたつばめの雛を発見してしまった。

商店街のシャッターの閉まったお店の前。

私の視界の片隅に入ったとき、一瞬ゴミかと思ったけれど、なにか生命の動きを感じて、私は歩みを止めたのだ。スルーしてしまおうかと思ったけれど、私はその違和感に足を止めずにいられなかった。

そして凝視したら、それはつばめの雛だったのです。

小指の半分ほどの肌色のかたまり。よーく見ると首から頭にかけて、くちばしのようなものが見え、かすかに動いている。

上を見上げれば、店の軒の裏側につばめの巣がある。きっとこの子はそこから落ちたのでしょう。

私はどうしていいのかわからなくて、1分ほどその場に立ち止まって、結局それをやり過ごしてしまった。

今朝、その場所を通ったら、何もなく、お店も開いていたの。

あの雛はどうしたかな。

お店の人に発見されて、巣に戻してもらえたのだろうか。

結局何もできなかった私。見なければよかった、と一瞬思った。

でも。と思い直す。

見えないより見えたほうがいいに決まっていると思う。どんな事柄であっても。

もう一度問うてみる。見えないよりもどんなことでも見えたほうがいいに決まっていると思う。知らない方がよかったことはたくさんあるけれど、知らないより知っている方がいい。生きるということはそういうことなのだ、と。より多くのものを見て、多くのことを知ることによって、私たちの考えは深みを増すのだと。

私は残酷だな、と思う。

どうしよう、と思いながらも何もできなかったこと、すぐにこのことさえ忘れてしまうだろうこと。

それでも、見たことを後悔してはいけないのだ。

いしいしんじ 『海と山のスライドショー2』<みつまめ>

『いしいしんじ 海と山のスライドショー2』 青山ブックセンター みつまめ★★★★★


いいイベントを開いてくれて、青山ブックセンターには投げキッスを贈りたいくらい感謝している。

つぶれかけたけど、なくならないでくれてよかった。

なるべく、ABCで本を買うように努めなくては。


6/11に行われたいしいしんじさんの”海と山のスライドショー2”。

いしいさんは三崎と松本におうちを借りている。

前半はいしいさんの海(三崎)と山(松本)の生活の写真をスライドショーにして、彼自身が解説。

いしいさんの愛する魚屋『まるいち』にいつか行ってみたいなあ、と思う。そこのイカは本当にびっくりするほどおいしいんだって。

いしいさんの生活はとてもステキだ。古い一戸建ての家に住み、採れたての魚や、土の味のする野菜を食べる。私はいしいさんの召使いとなって、いっしょに生活したいなあ、とか考えてしまう。


そして、後半はポーの話。

新作『ポーの話』について、いしいさんが語ってくれた。

半分は哲学的な内容だったが、とてもとてもやさしい言葉でゆっくりと話してくれたのだ。

善と悪は本質的には同じものだ、といしいさんは言った。

それを「善」とか「悪」とか言うのは、その人の主観で判断された後のもの―いわゆる”照り返し”に過ぎない。その本質というのは”川の中”にもぐってみないとわからないのだ。そして、その本質とは言葉にできない何かで、その言葉にできないうごめいている何かを『ポーの話』という作品の中で書きたかったのだ。


『ポーの話』では水、というのが、お話の流れの大きな柱になっているのだけど、水は循環している。(物語の中でも循環するものとして描かれている)山の上流から流れた水は、中流、下流、海へと流れ、そしてそれは空にのぼり、雨となり、また山に注がれる。その繰り返しだ。

それでもって、空気もまたそうなのです。ジョン・レノンやマリリン・モンローの吸って吐いた息を現在を生きる私たちが吸っている可能性ってほぼ100%なんですって。つまり、空気というのもまた循環しているわけです。


で、ここから先は、そんなこと言ったかどうかよく覚えていないのだけど、地球や私たちの命そのものも循環して、すべてはつながっているのだ…とつまりいしいさんはそんなことをおっしゃりたかったのだと私は思います。

なんだか、私はその壮大な話に、世界の成り立ちまでをも思って、胸がいっぱいになり、涙ぐんでしまったのです。


あんなイイ話、めったに聞けるものじゃないから、テープにでもとっておくんだった、と思う。


最後にお客さんから「いしいさんは普段どんな音楽を聴くのか」という質問が出た。

「今日はレイ・ハラカミを聴いてきた」とおっしゃっていた。

あと、ノルウェイのジャズをよく聴くとも。(他にいろいろおっしゃっていたけれど、忘れてしまった)


そうだ、あとステキなプレゼントがあったのです。

入り口で小さなボルビックが配られたの。何気なく頂いて、ごくごく飲んでたんだけど、なんといしいさんのうなぎサイン入りだった!!カ・ン・ゲ・キ!(っていいつつ、もう捨てちゃったけど)

それから、いしいさんオススメの水の話を集めたリーフレットが配られました。そして、いしいさん大絶賛の西脇順三郎の詩も。


いしいさんと同じ時代に生きていることを、いしいさんの作品と出会えたことを感謝したい。彼の作品はいつも私の魂を強く揺さぶり、私は自分の命とか家族とか人生について考えてしまうのです。

人生はつらくて悲しいが、美しい。いしいさんの本はそのことをただ静かに受け止め、綴っている。


うなぎ水

おみやげのうなぎ水。小さなボルビックにいしいさんがひとつひとつ手描きしてくれたそう。

うなぎの絵です。わかるかな。

マラソン<みつまめ>

マラソン



『マラソン』渋谷TOEI2  みつまめ★★★


若い子たちと渋谷のアフタヌーンティーでスパゲティのランチを食べる。

広くて、光のよーく入る店内はとてもいいのだけど、パスタもケーキもあんまりおいしくなかった…。

渋谷の公園通り店は7月いっぱいでクローズだそう。

かつては雨後のタケノコのように増えていたアフタヌーンティにもこういう時代がきたのだ、とちょっと寂しく思う。かわいい雑貨がどうこう、っていうファンシーな時代は終わったのね。


よし、泣くぞ!と思って、『マラソン 』を観た。

もーお、泣けましたよ!!


チョウォンという自閉症の19歳の男の子は、その障害にも関わらずマラソンをしている。

お母さんが教えてくれたマラソン。

その彼とお母さん、そして家族との関係を描いた作品なんだけど。

最後は42・195キロというフルマラソンを3時間弱で走りきるの。

(これ実話をもとにしたストーリーらしい。)


障害者をテーマにした作品ってすごく難しいと思う。

でも、この映画ではものすごくよく描けていた。

美化するでもなく、バカにするでもなく、淡々とリアルな感じ。

障害者と接する周囲の人たちの感情もリアルで、けっこう残酷なの。

それは、とってもリアリティ。


最後のフルマラソンを走りきるシーンは本当に見事で、美しくって、主人公が走っているときに見て心を震わせている心象風景を、私たちも一緒に共有することができるのです。

彼はこんな気持ちで走っているのだと、だから走りたいのだと、私たちはわかって、胸がいっぱいになってしまう。


結局私、ハンカチ1枚がぐっしょりするほど、肩を震わせて、泣いてしまった。

ちょっとすっきりした。


”泣くって決めて観る映画”という『FRau』の企画。

私は『マラソン』を推すわ!

袋小路の休日<みつまめ>

袋小路の休日


『袋小路の休日』 小林信彦 みつまめ★★★★


趣味のいい知り合いがいちばん好きだと言ってた作品。

小林信彦は初めてだったけれど、とても興味深く読んだ。


雑誌の編集者、放送作家、映画監督…60年代当時の最先端の仕事をしながらも、上手に世の中になじめず、喪失感を抱えて生きている人物たちを、静かな視点で丁寧に描いている短編集。

雑文書き、今で言うコラムニストを職とする”宏”の主観という形で描かれているが、この”宏”というのはおそらく、著者自身で、ここで描かれている人物たちもまた実在したのだろうな、と思う。


7編の中でも、私が特に印象深かったのは「隅の老人」と「自由職業者」。

時代に乗り遅れたことに気づけない人たちの物悲しさがわかりやすく描かれていたから。

それは今も言えることで、私だって気をつけなくちゃいけない。


私は知らない時代だけれども、60年代の高度成長期はこうだったのだろう。時代がどんどん変化していき、新しい価値や考え方が生まれていく。ものすごいエネルギーの熱を日本が有していた昭和という時代。そこで上手に生きていけない男たち。今となっては、歯がゆいくらいの不器用さだし、固定観念にしばられた思想の持ち主だけれど、60年代の生き方というのはこういうものなのかもしれないな、と思う。


古き時代、古き思想、もう失われてしまった、そんなに悪くなかった昭和という時代。

その時代への喪失感と哀愁。

私は小林信彦のこの作品を読んで向田邦子を思った。

小林氏は1932年生まれ、向田邦子は1929年生まれ。

同じ時代に生まれ、戦争を体験し、高度成長期の急激に変化する日本を同じような職を経て作家になったふたり。

昭和の香りがぷんぷんするふたりなのかしら。

陽気なギャングがなんとやら。<たけのこ>

伊坂 幸太郎
陽気なギャングが地球を回す

たけのこはいま伊坂幸太郎さんに軽くハマってます。


別段好きとかってわけではないんですけど、


なんかひとりの作家さんの作品を


連続で読むとその人の世界に浸れる気がして。


んでまぁ何冊か読んだんですが、とりあえずこの本の感想から。


まぁ、イイのはキャラクターだけです。


あとタイトルか。


タイトルにやられた(笑)


内容は悪くないし普通に面白いんだけど、


先が読めてしまう、起伏がない。


『きっと上手くいくんだろうなぁ。』


なんてなんとなく読んでしまった。


小説ってなにかがあるんだけどこの本には何もない。


良くも悪くもね。


それは作者自身があとがきで語ってます。


あと、映画化されるんだそうです。


ホントにマンガとか、脚本っぽい。


B級映画の。


でも読んでる時はなんだかウキウキした気分だったんだよね。


今日は七夕。


子どもの頃、短冊に書いた願いはいつ叶うんでしょうか(´Д`;)??

知ってる??<たけのこ>

著者: 山崎 さやか
タイトル: はるか17 1 (1)

知ってますか?

『はるか17』というマンガ。

あらすじは…

さえない女子大生・はるかはひょんなことからタレントになってしまう。

最初はいやいやこなしていた仕事であったが、

次第に芸能人という仕事にやりがいを感じ始める。

はるかは芸能界の荒波にもまれながらも成功を目指し歩きだすが…。

って感じなんですけど、

いやねぇ、ホントすげぇ面白いです。

もちろんはるかが少しずつ成長して

世間に認められていく様子も面白いんですが、

芸能界ってものの恐ろしさにもドキドキなんですよ。

噂で聞くような怖い話満載。

何巻だったか忘れたんですけど、

若槻千夏が帯で

全部本当の話なんです!みたいなこと言ってて笑いました。

オイ!

ホントだって認めちゃってイイのかよ!!

って。それくらいヘビー。

しかも登場人物の顔が実在の芸能人そのままな奴もいて、

読んでるこっちが焦らされます。

簡単に言っちゃえばサクセスストーリーなんだけど

それだけじゃ終わんないんですよねぇ。

時間あったら読んでみてください。

なんでこの話書いたかっていうとですね、

テレ朝でドラマ化されて今日から放送なんですよ。

『平山あや』がはるか役なんです。

はじめ聞いたときは『ショボッ!!』って思ったんですけど、

よく見てみれば、まぁまぁハマってました。

でもね、たけのこの好きなキャラが

ただのキモいおっさんになっててへこみました。


うぅ…オグちゃん…(泣)


まぁ他のキャラはイイ感じだったし、

原作自体はバッチリなんで期待してます。


追伸

みつまめに


『あんたが記事書くとこのブログ、某国並に民度が下がんのよ!!!』


って言われてしまいました(涙)

おんなのこのキモチ<みつまめ>

おんなのこのキモチ


『おんなのこのキモチ』 下北沢駅前劇場  みつまめ ★★★


劇団猫のホテル のユニット、表現さわやかの公演。

ショートコント(?)の重なりがストーリーを生んでいく。

くだらないんだけど、おもしろくてしかたがない。


特にモテる男のセリフ、

「あ、もしもし、僕ですが、今日なんだかちょっと元気がなかったみたいだったから、気になって心配しました。また電話します…ガチャ」

がツボだった。

いるよね、そういうこと言う男のヒト。

岡村ちゃんやら、ゲンズブールやら、笑える歌もいっぱい。

最後のオチは電車男。

池田鉄洋がかっこよかった。



マヌエル<みつまめ>

マヌエル


マヌエル 』渋谷  みつまめ ★★★★★


渋谷で今いちばん好きなお店。
ポルトガル料理です。
素材や色は地味なんだけど、でもひとつひとつの仕事がとても丁寧になされていて、1品1品が輝くようにおいしいの。
素材が本当によくて、野菜もお肉も味が濃くて、大地の味がする!
ワインもたくさんそろってます。
接客もすばらしい。
ひとつ難点を言えば、いっつも混んでるのと、テーブル同士が近すぎて隣の話が聞こえちゃうことかな…。


オススメは
● 豚とアサリのアレンテージョ風
豚とアサリをちょっと辛めに煮込んだ1品。いっしょに煮たジャガイモが味をすって最高においしい!
● タコのリゾット
タコがもはやタコではないくらいやわらかい。海の香りがギュッとつまったリゾットはめまいがするほどおいしいのです。ひとつまみのコリアンダーがきいてます。
● ポートワイン
各年のポートワインがそろっています。食後酒としていただいたのだけど、これまた感動的においしい。甘くて濃厚。


学生の友だちと5年ぶりくらいに会った。
相変わらずとても元気でバイタリティに溢れている人。
おいしいごはんを食べて、お酒を飲んで、旅行の話をしたら、遠くに行きたくなった。

『ウィスキー』 <みつまめ>


ウィスキー


ウィスキー 』 渋谷シネアミューズ  みつまめ ★★★


いい映画ってなんだろう、ってときどき思う。

フランソワ・トリュフォーは「何かメッセージがあるのならば、映画を撮るより郵便局に行った方が早い」と言ったそうだ。

高校生の時にその言葉を知ってから、私は映画とはそういうものなのだ、と思うようになった。


ひとりで観にいくのもいいけれど、私は人と観るのも好き。

自分が気づかなかったことを指摘してくれたり、ひとつのシーンに対する意見がちがったり、同じだったり、観た映画についていろんなことを話し合えるから。

それは映画への理解と共に、いっしょに観にいった人への理解も深まるのです。

それは、本当にステキなことだと思う。

だから、私にとっていい映画って観終わった後に、話題を喚起するような何かを持っている作品なのかも。

そういう意味で『ウィスキー』は私にとってとてもいい映画だった。

多くを語らないことで私たちのイマジネーションを刺激し、見えている以上のものを見せてくれたのだ。

観終わった後、私たちのおしゃべりは止まらなかった。

あのシーンは一体何を示していたのか?あの手紙には何が書いてあったのか?あの唐突なラストシーンの後、どうなったのだろうか?

今だって、何か言い足りなくて、私はあの映画のことを考えてしまうのです。

ウルグアイの映画。(ブラジルとアルゼンチンの間。ウルグアイ史上ではいまだ映画は60本しか作られていないそう!)

老人、というか大人、というか、人間の孤独がたんたんと綴られている。

その視点は悲観するわけでも、否定するわけでもなく、とてもフラットなの。

ちなみにタイトルの『ウィスキー』。

ウルグアイでは写真を撮る時に「ウィスキー」って言うんだって。日本で言う「チーズ」のこと。確かに、トイレの鏡に向かって「ウィスキー」と言ったらニッコリ笑顔になった。

韓国料理 吾照里<みつまめ>

吾照里


『韓国料理 吾照里 』 渋谷    みつまめ ★★★★


渋谷にもこんなお店があったなんて!

そんなびっくりな韓国料理の店。

韓国人自らが経営していると思われ、スタッフにも韓国人が多い。

店内には韓国のテレビが流れている。

雑居ビルの4Fにあり、一見狭そうだけど、テーブル席の奥には掘りごたつの席も。

ピカピカしてないけど、清潔感のある店内。


海鮮パジョン(チヂミ)は今まで食べた中でいちばんおいしかった!

(私は韓国には行ったことがないので、国内の話ですけれど)

他にはプルコギ、水餃子、ビビンバ、ユッケなどを頂く。

焼肉も本場っぽくておいしそうだった。


夕ごはんで行ってもひとり¥4000くらい。

大勢でわいわい行ったら楽しくておいしいかも!


それにしても、ビールを飲むと私は言わなくてもいいことを言ってしまうなあ、と反省。

映画はとてもおもしろかった。