さようならブックファースト
お友達が転職コーナーで立ち読みしているところに遭遇。
私も同じものを探しに行ったのだ。
私はその日、苦手な後輩のことでまいっていて、
ワインを飲みながら泣きべそをかいた。
出張に行った帰り道に1階で立ち読みしてるお友達を見かける。
いったんは声をかけるのをやめたけど、もう一周してまだ立ち読みしてたから、声をかける。
カフェに行って、中華料理を食べた。
弟と渋谷で遊ぶと最後によるのはここだった。
本やマンガをふたりして買いたいだけ買って、おうちにつれて帰って、
弟の部屋でふたりで音楽聴きながら、眠くなるまで読んだ。
おうちに帰りたくない日に、寄る。
イスに座って座り読み。
なんとなく寄るけど、新刊コーナー見てたら、
どんどん本は誕生するのに、私は家に積んである本さえ読み終わってない!
と思って吐きそうになって、お店を飛び出す。
その舞台はいつもブックファーストだった。
ミーハーな品揃えだけど、新しい本がいつも置いてあって、明るく健全な感じが好ましかった。
1階の新刊コーナーを見て、雑誌コーナーでファッションのとこと料理のとこチェックして、
2階すぐの新刊コーナー見て、文芸コーナー見て、外国本のとこ見て、文庫見て、新書をちょこっとだけ見て、
欲しいものがあったらお買い物。
もう一回1階の雑誌のコーナーをぐるりと一周。
ときどき地下や上の階も遊びに行った。
それでもって、まだ10時前だったら隣のヴィロンでバケットを買って帰ってた。
悲しいことが会った日も、嬉しいことが会った日も、雨の日も台風の日も雪の日も、
いつもブックファーストがあの場所にあるのは、
ひとりきりで本に囲まれていられる場所があるのは、
本当に素敵なことでした。
10月14日にちようび。
夕方ごろ、弟とふたりでブックファースト渋谷店に行く。
私は向田邦子の『父の詫び状』とクレストブックの『イラクサ』を。
弟は村上龍の『半島を出よ』を買う。
レジに並んでいたら、隣の人が支払いのときに「ありがとう」と言っているのを聞いて、
私もクレジットカードで支払いをして、「カバーも袋もいりません」と言って、
本を受け取ったときに「ありがとう」と大きな声で言ってみた。(いつもは言わない)
「またお越しください」
とお兄さんは言ったが、私は新しいブックファーストには
もうそんなには行かないかもしれないな、と思った。
「記念撮影」
と言って、弟に立ち読みさせて外から写真を撮る。
でも渋谷は人が多いから、弟の姿は隠れてしまったのだ。
バジル!
すてきな三にんぐみ
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朝いちばんのブックファーストで「すてきな3人ぐみ」を買う。
「はらぺこあおむし」は持ってそうだし、「どんなにきみのことがすきだかあててごらん」は恋人って感じだし、
「マドレーヌ」は女の子っぽいし、「100万回生きたねこ」はまだ早いし、
「ルピナスさん」も難しいし、「かいじゅうたちのいるところ」は絵がキライかもしれないし…。
さんざん迷って、「すてきな3人ぐみ」にする。
デパートで、ハロウィンの箱入りお菓子と、栗きんとんを買う。
ハッカキッズで、しましまのロンパースを買う。
今日は1年ぶりにかなちゃんに会える日!
お友達のお子さん、かなちゃんは私の大好きな男の子。
弟さんが生まれたのを機におうちに遊びに行きました。
1年前には「わふわわわわ」と意味不明なことしか言えなかったかなちゃんは、
私の名前を呼べるくらいになっていた。
2歳9ヶ月って、こんなに賢いのかなー?
やっぱりかなちゃんは特別に賢くてかわいい気がするんだけど。
かなちゃんのことを抱っこしてぐるぐる回転して、
いっしょにパズルでゾウとくじゃくとカメとハリネズミを作って、
写真撮影をして、
変顔して、
ぶぶぶーって顔をして、
オニごっこした。
最後に握手して、ほっぺにちゅーってしてもらったとき、
すっごく嬉しくて、頭の中がぱあーって明るくなったような気がした。
年上のお友達は、相変わらずハツラツとしていて、
私たちにおいしいご飯をたくさん作ってくれた。
生春巻き、タイカレー、チャプチェ、きのこのグラタン…。
朝目覚めるとキンモクセイ
窓を開けて寝ると、目を覚ましたときに部屋の中がキンモクセイの香りがして嬉しい。
でも、だいぶ寒くなってきた。
毎日少しずつ季節が進んで秋が深まっていく。
銀杏が黄色くなって、街がグレーになって、空気が澄んで、星が輝きを増して、ニットが恋しくなって、
息が白くなって、ミルクティーをいっぱい飲むようになって、「もう年の瀬だね」というのが合言葉になって、
気づくと冬になっているのです。
友達に呼び出されて、代々木でおいしいお魚をご馳走になる。
ボタンエビとオコゼが感動的にうまい。
まだ2回目だけれど、ここのお店は今年のヒット!と呼べるくらいだと思う。
仕事が丁寧で、お店の人が一生懸命で、何より素材も腕もよし、コストパフォーマンスもすばらしい。
お仕事の話。
「今の仕事はあなたじゃなくてもできるんじゃないか、もったいない」
と言われる。
私は私で今の仕事に愛情を注いでいて、誇りを持っているのですれどね。
最近、自分と仕事の距離のとり方についてずっと考えている。
もともとは興味があって、すべてを投げ打ってでもやりたいと思っていた仕事なのに、
「働き続けること」に執着しだしている。
女の人がずっと働くことは大変だけれども。
働き続けるためにこの仕事を選んだわけではないのに。
もっといろんなことをやってみたい、いろんなことをできる人になってみたい、
という気持ちはどこかにあって。
これから自分にとっての仕事のポジションをどこに置くか、が
私の人生を決めていくような気がする。
ブックファーストで会いましょう
渋谷のブックファーストがなくなってしまう。
長い間、渋谷駅を経由していた私にとって、ブックファーストは特別な場所だった。
別に棚は普通だと思うのだけど、あの空間だ好きだったのです。
とくに働き始めてからは、仕事帰り、特に約束もなくて「まだ11時前だ」と思うと必ず寄った場所。
だって、11時までやっているところなんてブックファーストとタワレコしかないんだもん。
そして、ひとり暮らしを始めてからは、帰り道「まだやってる」と思うと寄らずにはいられなかった。
早く仕事が終わっても、家に帰る前にどこかに寄りたくて、
でもおいしくないコーヒーとか飲みたくないし、
とりあえずブックファーストに寄ってしまう。
夜遅くの本屋さんはとても静かで、あたたかで、凛とした感じがして好きだった。
同じように、仕事帰りや飲んだ後に「なんとなく」寄った本を愛する人たちに囲まれて、
でも距離を感じながら、本を読んだり選んだりするのは、
何か守られた感じがして、とても心が落ち着いた。
私はいったいどれだけの本をここで買ったことでしょう。
そして、私はたくさんの友人たちとここで偶然出会っては、
その後、渋谷の街に飲みに行ったりしたのです。
4年前の夏、好きだった人に偶然ブックファーストで会ってから、
私はしばたく足繁く通うようになり、
彼も同じ理由で足繁く通っていた、というのは
私にとって幸福な思い出です。
雑誌売り場で出会って、ふたりして顔を赤らめて、
アプレミディーでビールを飲んで(アプレミディーなつかしい!今もあるのだろうか)、
それでも別れがたくて、オープンカフェに場所を移して、
空が白むまでおしゃべりをしていた。
季節は夏だったのに、朝方は少し寒かったのをよく覚えている。
私は彼のことが本当に本当に大好きだった。
涙が出るくらい。
私はひとつの場所に長く住んだことがないので、
実はこんなにも長い時間お世話になって、私にいろんな思い出を与えてくれた本屋さんは
ブックファースト渋谷店だけだったんだなーと思います。
というわけで、私なりにブックファーストの弔い。
毎日1冊ずつ小さな物語をブックファーストで買って帰ろう。
- シェリ (岩波文庫)/コレット
- ¥630
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高校生のときに赤木かんこの紹介で出会った1冊。
後にも先にもいちばん好きな恋愛小説だと思う。
久々に読み返したら、高校生や20歳くらいで読むよりも、もっとおもしろかった。- 恋愛において、ときに心と体のことが別にして語られることがあるけれど、
- 私はそういうのは全然わからないし、
- この物語を読むとそういうのはばかばかしいというか吹き飛んでしまう。
50歳の高級娼婦レアと25歳の美青年シェリ。
「息が詰まるような」ふたりの恋に、高校生の私は本当に息もせずに読み進めたのだが、
誰かを狂おしいほど欲する気持ちとか、濃密な空気感とか、 - 今ふたたび読み返しても、やっぱり苦しいくらいだった。
重みのある薔薇色の真珠、薔薇色のガウン、摘みたてのイチゴにフレッシュな生クリーム、オレンジの花の香りをたっぷり吸ったアカシアの香り、目の覚めるようなブルーの服に羽根つきの帽子…。
パリの華やかで気だるい雰囲気にもうっとりしてしまう。
その世界観とか文章も物語りもすべてが、洗練されているのも素晴らしい。
最後のレアとシェリのかけあいについては、私もちょっと残念だと思うけれど、
これについては、訳者の工藤庸子さんの解説の通りかと。
私がいちばん好きなのは、
レアとシェリが恋人になる瞬間の駆け引きとそのお互いの吸引力の感じ。
直接的な描写はないけど本当に官能的で、今回読み返してもため息が出た。
そして最後の1文がいつも忘れられません。
シェリが空を仰ぎ見る姿が目に浮かぶのです。
ヨムヨムをヨム
20歳の女の子とゴーカランチ。
たまにはいいよ、とお姉さんぶって、ホテルの上で国会議事堂を見下ろしながら。
「こんなところ来ないから緊張します」
と言われて、私も20歳のころはそうだったな、と思った。
世の中にはガラスの天井がある、と本当に知ったのは働き始めてからのことだった。
20歳なんて、これから何にだってなれるよ、と半分ウソで半分ほんとうのことを言う。
でもね、私たちは自分のなりたいものになれるのだ。
本当はね。
自分の生きたいように生きるの。
そのために頑張るの。
帰り道、本屋で立ち読み。
yomyomの太田光の書評。
書評を読んだだけで泣くってどういうこと?って思いながらさめざめ。
10月末に発売されるアーヴィングの『また会う日まで』の書評でした。
太田光はやっぱりすごい。
やさしくうつくしい言葉で、物語の本質を深めて深めて語る。
ぜったい読む!って思ったもん。
自分の生きたいように生きるには、
誰かを愛するには、
幸せになるためには、
努力がたくさん必要だなーと思う。
ただぼんやり生きているだけじゃ、私たちは幸せにはなれない。
「こう生きたい!」って毎日思って、
毎日「大好きだよ」って言って、
毎日一生懸命生きなくちゃ、幸せになれない。
大きな交差点にかかる歩道橋の上で月を見ながらビールを飲んだ。
自分の心の中のことをゆっくりゆっくり整理してみる。
ずっと泣きたいと思ってたけど、私の心は時間が経つほど穏やかになって、泣いたりしなかった。
よかった。
外で飲むビールが好きだな。
世界中からビールがなくなる日が来ませんように。
優しい気持ちで目が覚める。
昨日読んだアーヴィングの書評に、
「さようならを言いたくなかったら言わなくていい」と言ってもらえることの幸せ、
というのが書いてあったのを思い出した。
ボーダーのTシャツを脱いで、ニットとスカートを着てキチンとしたかっこうをする。
気持ちのいい秋空を見上げたら、少しだけ心が軽くなったような気がした。
結婚する友達が、仕事を辞めて結婚するか半年考えた、と言っていて。
「毎日少しずつ考えていたら、ある日答えが出たの」
毎日、少しずつ考えたら、いつか答えは出るのかな?って聞いたら、
「大丈夫、きっとわかる日が来るよ」
って笑ってた。
悩むんじゃなくて、私も毎日少しずつ考えよう。
正しい道を進むために。
月がきれいですね
『夜のミッキーマウス』谷川俊太郎
- 夜のミッキーマウス/谷川 俊太郎
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『雪沼とその周辺』堀江敏幸
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何度も泣きそうになったけれど、涙はこぼれなかった。
それがこの作家の上手なところなんだな、と。
ひたひたとした悲しみが心を締め付けて、いっぱいにするけれど、あふれさせない。
泣かすことは簡単だもの。
雪沼という地域に住む人たちにまつわる7つの物語。
きらびやかなものから置き去りにされた山あいの町に住む人々。
そんな人たちにも人生があって。
華やかでもなんでもなく取るに足らない小さな毎日があって。
悲しいこともいっぱいあって。嬉しいこともいっぱいあって。
この作家が光を当てなければ、語られなかったであろう小さな人生たち。
もちろんフィクションなんだけど、本当に雪沼という場所があって、こんな人生があったんじゃないか、と
思ってしまうくらい、細やかで素晴らしい表現力に裏打ちされた作品でした。
やさしくて上品な文章でした。
私は『イラクサの庭』(女性の好きそうな話です。『フラウ』に寄稿されたものと納得。)と、
『送り火』が好きだった。
ああ、冬の寒い寒い夜に読みたい、と思った。
冬の寒い寒い夜に毛布にくるまって、あまいミルクティーを飲みながら読みたいと。
冬の長い夜に何度も何度も読みたいと思った。
何度も泣きそうになりながら、決して涙はこぼさずに。
私の人生はどうなっていくのだろう、と最近思います。
苦しいことがあって、何よりも自分のことが嫌いになりそうだった。
頭が変になりそうだった。
どこへ行っても何をしてても、祈っているのはひとつだけ。
自分の大切な人がいつも幸せでありますように。
私がいつも正しい道に進むことができますように。
オアシス
昼過ぎに弟が遊びに来て、昼ごはんを食べた。
トマト焼きごはん。
ごはんにバターしょうが焼き豚肉と焼きトマトと目玉焼きとレタスを添えて。
男らしくて元気の出るメニューです。
中国のお土産を渡して、中国の話をした。
あと、おばあちゃんに電話した。
その後、友達の会社に自転車で物を返しに行く。
会うほどにやせていくお友達。
お仕事中毒という病気。かわいそうに。
帰り道、自転車で都会のオアシスへ。
こんなに美しくて静かで人が少ない場所があるなんて!
本当におかしいくらい、みんながみんな寝転んで昼寝したり、空を見上げていました。
小さな子供がたくさん遊んでいた。
私もみんなにならって、裸足になって、芝生に寝転ぶ。
ああ、本当に天国みたいに気持ちがいいなあ。
夢のような場所を見つけてしまった!
これから何度も何度もここへ来ようと思った。
帰り道、黒い靴を買って、夕ごはんの買い物。
にんじん、れんこん、たけのこ、こんにゃく、しいたけ、さやえんどう…大橋歩さんのレシピで筑前煮を煮る。
しっかり味がついておいしくできました。