はなび | hirari

はなび

会社のお呼ばれで隅田川の花火。
会社の先輩たちと連れ立って。
浴衣を着ていく。
小さな私の体にぴったりと合う
紺地に白の紫陽花模様。
それにピンクとえんじの帯を締めると
どこへ行ってもほめられる。
自分でいうのもなんだけど
本当に素敵な浴衣なのだ。
おはしょりがきれいに出なかったり、
帯のタレが長すぎたり、
うまく着られなくて、
何度も着なおしているうちに少し遅刻。


ビルの屋上から見る花火は
とても大きくて、火の粉が降りかかるよう。
会社の人といっしょに
快適な場所で見る花火って
私がいままでの人生で見てきた花火とは違いすぎて、
なんだか花火を見たような気がしないのです、正直。


ご招待していただいた方に丁寧にお礼を言って
上野に移動してから飲みなおす。
さらに終電近く、先輩がもう一軒、というから
うろうろ次のお店を探して、
薔薇の館、という店の名前そのままでは?先輩!
というスナックに入った。


意外、というかまあ普通のスナックで
私たちの他にも中年の男女4人のお客さんもいたし、
男性であるママも美人できちんと着物を着ていたし、
いい店だった。
ママと楽しくお話して、焼酎を飲んでいるうちに、
いつのまにかカラオケ大会。
音楽をやってる先輩は
「俺はカラオケがきらいなんだ」
とか言ってたくせにケツメイシを歌って
隣のテーブルに乗り込んでいくし、
隣のテーブルのおじさんに見えて実はまだ28歳というおじさんが乱入してきて
「この子はオザケン好きなんですよ」という後輩の言葉を聞いて
今夜はブギーバックを歌ってくれたし、
ママが美声でひばりやジュリーをそれはそれは上手に歌い上げるし、
みんながそれぞれめちゃくちゃ頑張って
その小さなお店を盛り上げようとしてて
いま思い出すとみんながみんなすごすぎるテンションで
とってもとっても楽しかった。
そしておじさんのリクエストに応えて
私もモーニング娘を歌っていたのだった。
(なぜか歌えたのだから彼女たちはすごい)
締めは越路吹雪が続いて、
最後にママが歌ったのは「愛の賛歌」で、
私はおぼろげにやっぱり愛の賛歌なんだなあ、と感慨深く思った。


話したことはほとんど覚えてない。
ママが55歳だってこと。
この業界に入って30年だって言ってた。
私は、酔っ払った頭でその時代からこの業界に入ったのは
なかなか大変なことだったんじゃないかしら、と思ったのだった。
それから先輩がママに口説かれてたこと。
枝豆がおいしくて、「冷凍?」って言ったら
「あんたバカじゃないの?冷凍なんて出すわけないでしょ。冷凍なんて」
とママが青筋立てて興奮しながら怒ったこと。
(この人、食に対してきちんとした意識をもっている、と感心した)
私がもう31歳なんです、って言ったら
「あんた人生まだまだよ。これからよ」と割と真剣に言われたこと。


なんかこんな面白くてばかみたいな夜って
人生に何度かしかないかもしれないなあ、
にやにやしながらくるくる浴衣を脱ぎ捨てて
私はベッドに倒れこんだのだった。