いしいしんじトークショー | hirari

いしいしんじトークショー

小説的に生きる。
私は小説を書かないので、
それがどういうことなのかわからないけれど。


だけど、いしいしんじが
「自分自身が小説そのものになっている」
というのはわかるような気がした。
さらに今回のいしいしんじの新作を読んで
ああ、いしいさんはもはや小説そのものになっているのだ、

とはっきりと思った。


いしいしんじがその場小説というのを最近やっていて、
私はまだ2回しか聞いたことがないけれど、
それはそれは不思議な体験だった。
私はいしいしんじに触れたことがないけれど、
彼に触れたら、ものすごい渦に巻き込まれて
彼の小説の中に入り込んでしまうんじゃないかと思った。


いしいさんの物語は人間の営みとか、生きるということを
まるで蚕が絹糸を紡ぎだすかのように、
彼の体の中から生まれる物語を語っているのだと。
だからこそ彼の物語は残酷なのにどこか温かくて、薄っぺらいところがない
ノンフィクション以上に真実を伝えてくれる。


「本を書くというのは

一瞬一瞬100%を出し切らないといけなくて

苦しそうだなあと思いました。
それでもつづけていくひけつをおしえて下さい」
という読者の問いに対して。

「自分には自分以外の世界に対しては

それしかできないという自覚をもつこと」
といしいしんじは答えていた。


私は小説家ではないけれど。
これくらいの覚悟で生きていかなくちゃいけないんだ、本当は。
と思った。
私の仕事なんて取るに足らない仕事ですが、でも。
仕事をするにも、人を愛するにも、
自分には自分以外の世界に対してはそれしかできないという自覚をもって、
生きていかなくてはいけないのだと。
自分が生きているという証をとめどなく流れていく時間のなかに刻み付けるには
そうやっていくしかないのだと、思ってなんだか泣けてしまった。


トークショーのなかで

いしいしんじが絶賛していた、よしもとばななの新作。

よしもとばなな、久しぶりに読んであぜん。

いろんなことを吹き飛ばしてしまうすごい話だった。

ラストに向かって私の胸は高鳴り震えた。

悲しくて、でも悲しいだけれはない魂の救済の物語。

読んだ後、何日も衝撃が心と体を捉えていて、

私はこの本のことを何日も考えていた。


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彼女について/よしもと ばなな
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