朝顔 | hirari

朝顔

昨日の残りのかぶとアスパラとえびのサラダとパンと桃をもりもり食べて、
洗濯をして、部屋の掃除をした。シャワーを浴びた。
それから、浴衣に着替える。
そして、電話をした。
「朝顔市に連れて行ってください」

私の浴衣はもう4年もまえに、誕生日に作ってもらったもので、
紺地に白の紫陽花柄。
いっしょに買った薄ピンクにえんじ色の帯は、すごくかわいくて、
そしていまの私にはかわいすぎるかもしれない。

浅草でどじょうを食べる。
渋谷の駒形どぜうは何度も行ったけど、本店は初めてで、
大きな広間に、いくつもテーブル代わりの板が渡してあって、座布団の上に座って食べるのが、
情緒があって楽しかった。
どじょうなべと柳川とビール。

浅草寺をお参りして、水上バスに乗って日の出桟橋へ。
浜松町から上野、入谷へ。
朝顔市は、思った以上にとっても普通のお祭りで、
とっても庶民的で賑やかだった。
道の一方に朝顔やさんがずらり、もう一方に夜店がずらり。
お好み焼き、無添加スペアリブ、あんず飴。
朝顔やさんをひとつひとつ順番に見ていく。
どこも扱っている商品は似たり寄ったりで、
「鉢も支えも土に還るエコ商品を使っています」
と謳ったお店が意外と人気だった。
どこのお店でも主流は、ひとつの鉢から4種類のお花が咲く、
という4種咲きの鉢。
ひとつの鉢に4種類の種がまいてあって、青やピンク、紫の花が楽しめるそう。
私はそれじゃないのが欲しかった。
「ひとつの鉢に1種類のお花が咲くのが欲しいんです」
と言って、ひとつひとつお店を訪ねていったら、出会ったのが、
「団十郎」という朝顔だった。
その名のとおり、市川団十郎好みのえび茶色の花をつけるという。
本当はブルーのお花がいいな、と思っていただけど、
よく見るとえび茶色も悪くない、というかむしろ素敵で、
ひとつ買ってもらった。

次の日、
「朝顔が咲いてるよ」という声で目を覚ます。
あずきを和紙に滲ませたような、優しくて上品な花が咲いた。
毎日いい天気で、夏の訪れを嬉しく思う。
そして、朝顔の花が開いているかもしれない、と思ったら、
目覚めるのが楽しくなる。

弟に朝顔市に行ったよ、と話して、
「ひとつの鉢に4種類の花が咲くのが人気だったんだけどね…」
と言ったら
「お姉ちゃんは、そういうの嫌いだもんね」
と言われて、本当にびっくりした。
弟は私のことをよくわかっている。