さようなら | hirari

さようなら

とっても酔っ払って、大きな駅から歩いて帰りながら、
この街が好きすぎる、と思った。
大きな街からの一本道、だんだんと静かになっていく。
夜遅くまでやっている本屋さんを超えて、灯りがともるワインバーを越えて歩いていく。

たくさんの思い出がありすぎる。
道端のオレンジの花を摘んだこと、
子供みたいに泣きながら「カレーの歌」を歌いながら歩いたこと、
弟とふたり夕ご飯の買い物をして子供が家に帰るように歩いたこと、
仕事だけした日、心を解き放ちながらこの道を歩いたこと、
雨に濡れながら歩いたこと、
心の中にある歌をひとつひとつ歌いながら歩いたこと。
たくさんの思い出がありすぎる。
そして、私はこの大きな街の近くにある小さな街を
本当に愛していました。
夜遅くまでやっているカフェも、
ときどき走りにいった緑があふれる公園も、
私の過去に繋がっていくような大きな交差点も、
古くからある街だけど若い人がいる雰囲気も、
本当に大好きだった。

こんなにも好きな街と好きな部屋に
私はもう出会えないかもしれない、とも思う。

でもさようなら。
私は出て行きます。
すぐに私は新しい街になじんでいくでしょう。
そして、私は新しい街を愛すでしょう。

そして、私はきっと忘れてしまう。
この街をこんなに愛していたということを。