『幸福な食卓』<みつまめ>
『幸福な食卓』 瀬尾まいこ みつまめ ★★★
お父さんは「今日からお父さんをやめる」と言い出した。
お母さんは近所のアパートでひとりぐらしをしている。
お兄ちゃんは学校一の天才だったけど大学へ行かずに農業をしている。
私は…。中学生の私は梅雨がやってくるとあのときのことを思い出してごはんが食べられなくなる。
そんな4人家族のお話。
この家では朝ごはんを必ず家族そろって食べる、という習慣がある。誰かが早く出かけなければならない日は全員が早起きして食卓を囲む。だから、家族に宣言すべきことがあるときは、たいてい朝ごはんのときになされるのだ。
物語の中では悲しいことが起こる。それは私たちの日常にも起こりうる悲しくてどうしようもないこと。
でも、それを乗りこえさせてくれるのは『家族』なのだと。
無条件に私たちを愛してくれるのは常に『家族』であり、『家族』こそ私たちの原点なのだ。
そんなことを思わせてくれます。
ちなみに、この作者は現役の中学校の先生だそう。
それにしても作家とは残酷だなあ。
物語を鮮烈にするために、愛すべき登場人物を殺してしまったりするから。
でも、人が死ぬことによって、物語に深みが生じるのは事実なのです。